女子バレー日本代表は、2026女子アジア選手権の予選ラウンド最終戦でベトナムと対戦。25-23、25-17、25-21のストレートで勝利し、3連勝で決勝ラウンドへ進みました。
両チーム最多の16得点を挙げた秋本美空をはじめ、出場機会を得た選手が結果を残したことは大きな収穫です。日本はアタック、ブロック、サーブのすべてでベトナムを上回り、スコア上は一度もセットを落としませんでした。
しかし、試合内容まで盤石だったとはいえません。
日本はベトナムのブロード攻撃に繰り返し得点を許し、第2セット以降は点差をなかなか広げられませんでした。決勝ラウンドで、より高く、より多彩な攻撃を持つ相手と戦うことを考えれば、3-0という結果だけで片づけられない課題も残っています。
秋本の躍動と、最後まで解決し切れなかったブロード対応。予選最終戦で見えた収穫と課題を、実況で確認できた試合展開とVolleyball World公式スタッツから振り返ります。

日本が3-0で予選3連勝――それでも盤石とはいえなかった
日本は第1セットを25-23で先取すると、第2セットを25-17、第3セットを25-21で制しました。
結果だけを見れば、危なげのないストレート勝利です。しかし、第1セットから第3セットにかけてベトナムの得点は23、17、21と推移。とくに第2・第3セットでは、日本が一気に引き離せない時間が続きました。
Volleyball World公式スタッツによると、日本はアタック得点で48-39、ブロック得点で6-4、サービスエースで6-2と、すべての自力得点でベトナムを上回っています。
一方、相手ミスによる得点は日本の15点に対してベトナムが16点。日本が相手のミスだけで勝った試合ではなく、アタックとサーブの得点差を積み重ねてつかんだ勝利だったことが分かります。
| 得点項目 | 日本 | ベトナム |
|---|---|---|
| アタック | 48 | 39 |
| ブロック | 6 | 4 |
| サーブ | 6 | 2 |
| 相手ミス | 15 | 16 |
| 合計 | 75 | 61 |
自力得点の合計は日本が60点、ベトナムが45点。数字の上では、日本が攻撃力の差を示しています。
それでも試合を通してみると、世界ランキングで日本を下回るベトナムに対し、守備から完全に主導権を握ったとはいいにくい内容でした。
勝利を支えた個々の得点力は評価できる。一方、相手の得意な攻撃を最後まで封じられなかったことは、決勝ラウンドを前に見過ごせないポイントです。
秋本美空が両チーム最多16得点――攻撃、サーブ、最後の1点まで存在感
この試合で最大の収穫となったのが、秋本美空のパフォーマンスです。
秋本はアタック13得点、ブロック1得点、サービスエース2得点の計16得点。両チームを通じて最多得点を記録しました。
アタックは21打数13得点で、決定率は61.9%。ミスは2本に抑え、公式スタッツ上のアタック効果率も52.38%と高い数字を残しています。
| 秋本美空 | 記録 |
| 総得点 | 16 |
| アタック得点 | 13 |
| アタック打数 | 21 |
| アタック決定率 | 61.9% |
| アタック効果率 | 52.38% |
| ブロック得点 | 1 |
| サービスエース | 2 |
秋本の良さは、単に得点数が多かったことだけではありません。
クロス、ストレート、バックアタックと複数のコース、攻撃位置から得点を重ね、サーブでもベトナムのレセプションにプレッシャーをかけました。第3セット終盤には、24-21からクロスを決めてマッチポイントをものにし、自らの得点で試合を締めています。
これまでの試合で中心を担ってきた石川真佑や和田由紀子だけに得点を依存せず、秋本が新たな攻撃の選択肢として結果を残した意味は大きいでしょう。

秋本に次ぐ11得点を挙げたのが佐藤淑乃です。
佐藤は15打数9得点、アタック決定率60.0%を記録。アタック失点を1本も出さず、安定した攻撃で日本を支えました。
さらに、レセプションではチーム最多となる19本を担当しています。攻撃だけに専念できる状況ではないなかで、守備の負担を引き受けながら2桁得点を残した点は評価すべきでしょう。
秋本が爆発力でチームを引っ張り、佐藤が攻守の安定感をもたらす。サイドアタッカーの異なる強みが、日本の48本のアタック得点につながりました。
最大の課題はブロード対応――同じ形で失点を重ねた日本
個々の攻撃では収穫があった一方、日本の守備には明確な課題が残りました。
その象徴が、ベトナムのブロード攻撃への対応です。
ベトナムはミドルブロッカーがセッターの背後へ大きく移動するブロードを繰り返し使用。日本は相手の狙いが明確になったあとも、ブロックで十分に対応できず、同じ形から何度も得点を許しました。
第3セット終盤にも、その問題が表れています。
日本は北窓絢音のクロスで24-20とセットポイントを迎えましたが、直後にベトナムがブロードを決めて24-21。最後は秋本のクロスで試合を終えたものの、終盤まで相手の得意な攻撃を止め切ることはできませんでした。
ブロードを決められた原因を、一人のブロッカーだけに求めることはできません。
相手のレセプションが安定し、セッターがネット際から複数の攻撃を選べる状況では、ブロードに対するブロックの移動は難しくなります。サーブで相手の攻撃を限定できなかった場面、ブロックの横移動が間に合わなかった場面、後衛守備が打球コースを絞り切れなかった場面が重なっていました。
サーブ、ブロック、ディフェンスは、それぞれ独立した要素ではありません。
サーブで相手のレセプションを崩せなければ、セッターはネット際で余裕を持って組み立てられます。相手ミドルを含む複数の選択肢が残れば、日本のブロッカーは判断を迫られ、ブロードへの移動も遅れやすくなります。ブロックが十分に完成しなければ、後衛も打球コースを予測しにくくなります。
日本がこの試合で問われたのは、ブロードそのものへの対応だけではなく、相手にブロードを高い精度で使わせないための一連の守備設計でした。
格上との対戦では、一つの対応の遅れが連続失点につながります。同じ攻撃を繰り返し許したことは、3-0という結果とは切り分けて検証する必要があります。
ブロックは6-4――それでも「守れた」とはいえない理由
チームスタッツを見ると、日本はブロック得点でベトナムを6-4と上回っています。
山口真季は日本のブロック得点6本のうち、チーム最多となる3本を記録。アタック4得点と合わせて計7得点を挙げ、ネット際で存在感を示しました。
| 選手 | ブロック得点 |
| 山口真季 | 3 |
| 秋本美空 | 1 |
| 佐藤淑乃 | 1 |
| 関菜々巳 | 1 |
山口個人の3ブロックは、明確な収穫です。
しかし、チーム全体としてベトナムの攻撃を抑えられたかどうかは、ブロック得点の本数だけでは判断できません。
ブロックには、相手のスパイクを直接止めて得点することだけでなく、ワンタッチを取って切り返しにつなげること、打球コースを限定して後衛を守りやすくすること、相手に攻撃の変更を迫ることなど、複数の役割があります。
日本は6本のブロック得点を挙げた一方、ベトナムはブロードを継続して選択し、実際に得点を重ねました。相手に同じ攻撃を使わせ続けたという点では、組織的な対応に改善の余地があったといえます。
「ブロック得点で上回ったこと」と「ブロードを封じられなかったこと」は矛盾しません。
山口が個人として3本を仕留めたことは評価しつつ、日本全体ではブロックと後衛守備の連動をさらに高める必要があります。

先発だけではない得点分布――選手層には確かな収穫
秋本、佐藤以外にも、複数の選手が得点を記録しました。
山田二千華はアタック8得点とサービスエース1本の計9得点。アタックでは16打数8得点、決定率50.0%を残しています。
山田が囮として跳んで相手ブロックを引きつけ、北窓のスパイクにつなげた場面もありました。公式スタッツに直接表れない動きも含め、攻撃の選択肢を広げています。
鴫原ひなたはアタックで5得点。北窓も途中出場から3得点を挙げ、第3セット終盤には長いラリーの中で好レシーブを見せたあと、バックセンターから得点。さらに23-20からクロスを決め、日本をセットポイントへ導きました。
| 選手 | 総得点 |
| 秋本美空 | 16 |
| 佐藤淑乃 | 11 |
| 山田二千華 | 9 |
| 山口真季 | 7 |
| 鴫原ひなた | 5 |
| 石川真佑 | 4 |
| 北窓絢音 | 3 |
| 関菜々巳 | 2 |
| 宮部藍梨 | 2 |
石川や和田に依存せず、出場機会を得た選手が得点を積み上げたことは、決勝ラウンド以降の選手起用を考えてもプラス材料です。
一方、メンバーを替えながら戦うなかでは、守備の連係やブロックの基準をコート上で共有する難しさもあります。選手層の厚さを結果につなげるためには、誰が入ってもサーブ、ブロック、ディフェンスの関係を崩さないことが求められます。

決勝ラウンドで問われるのは、同じ失点を繰り返さない修正力
日本は予選ラウンドを3連勝で終えました。
香港戦、韓国戦、ベトナム戦のすべてをストレートで制し、結果としては申し分ありません。秋本が16得点を挙げたこと、佐藤が攻守で安定したこと、山口が3本のブロックを決めたこと、途中出場の選手がそれぞれ役割を果たしたことも、確かな収穫です。
ただし、決勝ラウンドでは予選以上に厳しい戦いが予想されます。
ベトナム戦で繰り返し許したブロードへの対応は、単にミドルブロッカーだけの問題ではありません。サーブで相手の攻撃をどこまで限定できるか。ブロッカーが相手セッターとアタッカーの動きをどう共有するか。ブロックで絞ったコースを後衛が守れるか。そして、同じ形で失点したときに、試合の中でどれだけ早く修正できるか。
この連動を高めなければ、より攻撃力の高い相手には一度のサイドアウトでは済まず、連続失点を招く可能性があります。
3-0で勝ったから問題がなかったのではありません。
勝ちながら課題を確認できたことを、次の試合でどう生かすか。予選ラウンドで見えた弱点を修正し、決勝ラウンドで同じ失点を繰り返さないことが重要です。
まとめ|3連勝の価値を高められるかは、ここからの修正次第
秋本美空が両チーム最多の16得点を挙げ、日本はベトナムを3-0で下しました。アタック、ブロック、サーブのすべてで相手を上回り、複数の選手が得点を記録したことは大きな収穫です。
一方、ベトナムのブロードを最後まで十分に抑えられなかった事実は見過ごせません。
ブロック得点は日本が6-4と上回りましたが、それだけで守備が機能したとは評価できません。相手に同じ攻撃を繰り返し使われたこと、サーブからブロック、後衛守備までの連動に改善の余地があったことは、決勝ラウンドへ向けた明確な宿題です。
予選3連勝は、あくまで通過点です。
秋本をはじめとする新たな戦力の台頭を、チーム全体の強さへとつなげられるか。ベトナム戦で残った課題を修正し、より強い相手に対しても守備から主導権を握れるか。
日本の真価が問われるのは、ここからです。
※試合スタッツはVolleyball World公式記録を参照。アタック決定率は「アタック得点÷総打数」、アタック効果率は「(アタック得点-アタック失点)÷総打数」で算出しています。


