男子バレーボール日本代表が、アジア選手権2026の準決勝で韓国を3-0で破り、決勝進出を決めた。
スコアは、
日本 3-0 韓国
25-13|25-11|25-14
3セットを通して、韓国に一度も20点を許さなかった。
チームスタッツを見ても、その差は大きい。
ATTACK|日本 43-19 韓国
BLOCK|日本 8-6 韓国
SERVE|日本 10-2 韓国
OPPONENT ERROR|日本 14-11 韓国
総得点は75-38。
だが、この試合を「日本が圧倒した」の一言だけで終わらせるのは、あまりにももったいない。
サーブで崩した。
ブロックで止めた。
止め切れなくてもワンタッチを取った。
その後ろではディグが上がった。
セッター以外の選手も質の高いトスを上げ、最後は別の誰かが決めた。
石川祐希が15得点。髙橋藍が14得点。西田有志が10得点。
それだけでは、この日の日本の強さを説明できない。
なぜ、75-38という大差が生まれたのか。
準決勝で見えた日本の強さを、試合の流れと数字の両方から振り返る。
第1セット 25-13|「8-6」の数字以上に効いた日本のブロック
試合序盤から、日本のブロックディフェンスは機能していた。
象徴的だったのが、第1セット序盤のラリーだ。
韓国の攻撃に対して、日本は一度で止めるのではなく、何度もブロックタッチを取った。
1度、2度、3度。
ボールを落とさずにつなぎ続け、最後は石川祐希が4度目の攻撃をシャットアウトした。
ブロックは、直接得点になった瞬間だけが仕事ではない。
ワンタッチを取れば、その後ろにいる選手がボールを拾いやすくなる。
相手の打てるコースを限定できれば、ディフェンスを配置しやすくなる。
「ここには打てない」と意識させれば、アタッカーにより難しい選択を要求することもできる。
この日の公式スタッツでは、ブロック得点は日本8、韓国6。
数字だけなら、決定的な差には見えない。
しかし実際のコートでは、その「8本」だけでは測れない圧力が韓国にかかり続けていた。
髙橋藍が1枚で相手を止める。
小野寺太志がクイックをシャットする。
ブロックで止め切れなくてもワンタッチを取り、後衛が拾う。
さらに印象的だったのが、深津英臣のサーブから始まったラリーだ。
日本がつなぎ、韓国のクイックに対して山本智大がワンハンドでディグ。そこから石川がバックライトに入って得点した。
別の場面では、石川が自分で打つのではなく西田へトスを上げ、西田が決めた。
日本がこの日見せたのは、
サーブで崩す。
ブロックでコースを絞る。
ディグで拾う。
もう一度攻撃する。
という一連の流れだった。
第1セットは25-13。
まだ試合は始まったばかりだったが、この時点ですでに、この日の日本がどのように韓国を苦しめようとしているのかは見え始めていた。
第2セット 25-11|深津のサーブから始まった「7-0」
第2セット。
日本は開始直後から、一気に韓国を突き放した。
その中心にあったのが、深津のサーブだった。
序盤、日本は山本のディグから髙橋が決めて先制。
そこから深津のサーブが続く。
韓国のレセプションを崩し、返ってきたボールを髙橋が仕留める。
再び崩す。
韓国の攻撃ミスも重なり、さらに髙橋がダイレクトで決める。
髙橋と小野寺のブロックも飛び出した。
そして6-0からのラリー。
深津のサーブで韓国を崩す。
西田がワンハンドでディグ。
一度は相手コートへ返ったものの、日本は再びボールをつないだ。
深津がライトへトスを送る。
そこへ助走していたのは――石川だった。
本来のポジションとは異なるバックライトから、石川が打ち切る。
7-0。
韓国はセット開始早々、完全に日本の流れに飲み込まれた。
深津の価値は、もちろん配球だけではない。
この日はサーブで何度も韓国の攻撃条件を崩した。
守備でも公式スタッツで5ディグ。
さらに第3セットには、西田のディグから崩れたボールに追いつき、ワンハンドで髙橋へトスを供給する場面もあった。
そしてレセプションが安定した場面では、小野寺やエバデダン・ラリーを使った中央攻撃を織り交ぜる。
第2セット終盤、山本のAパスから小野寺がクイックを決めた場面では、韓国のブロックは中央についていけなかった。
深津が攻撃の選択肢を散らし続けたことで、日本のアタッカーはより戦いやすくなっていた。
第2セットは25-11。
日本はさらに点差を広げ、セットカウント2-0とした。
数字とプレーで見る日本の主役たち|得点だけでは見えなかった「全部盛り」
この試合では、多くの選手にそれぞれ違った形の見せ場があった。
誰か一人の爆発によって勝った試合ではない。
公式スタッツと実際のプレーを重ねると、そのことがよりはっきり見えてくる。
石川祐希|15得点・3エース、そして何度も見せた質の高いトスアップ

チーム最多得点は、キャプテンの石川だった。
15得点。
アタック11得点。
ブロック1得点。
サービスエース3本。
アタックは11/17。
攻撃だけでも十分な数字だ。
さらにこの日は、サーブでも韓国を苦しめた。
しかし、得点数以上に印象的だったのが、ラリー中のトスアップだった。
レセプションやディグから深津がファーストタッチを取ったとき、石川が次のボールを上げる。
西田へ。
時にはバックトスで攻撃を組み立てる。
そして別のラリーでは、自分自身がバックライトやバックセンターへ入り、攻撃する側に回った。
「石川に上げれば終わり」ではない。
石川自身が、次に誰が打てば日本の攻撃が成立するのかを判断し、ボールをつないでいた。
15得点という数字の外側にも、主将の仕事があった。
髙橋藍|14得点・5ディグ。ボールに触れるたび、日本の選択肢を増やした

髙橋は14得点。
内訳は、
アタック10
ブロック2
サービスエース2
さらに5ディグを記録した。
この数字だけでも幅広い。
しかし実際のプレーは、さらに多彩だった。
強打。
バックアタック。
1枚でのブロック。
ショートサーブ。
ダイレクト。
ディグ。
レセプション。
トスアップ。
第2セット終盤には、富田将馬のサーブで韓国を大きく崩したあと、髙橋がフェイクセット。
そこから西田がライトで打ち切った。
髙橋がボールに触れると、そのまま攻撃するのか、上げるのか、フェイントを使うのか、相手にとって判断しなければならないことが増える。
この日の髙橋は、単に「攻守で活躍した」という表現だけでは少し足りない。
ボールに触れるたび、日本の選択肢を一つ増やしていた。
そんな14得点だった。
西田有志|10得点より目を引いた「試合最多8ディグ」

西田は10得点。
アタックは10/14だった。
強烈なスパイクだけではない。
ブロックの指先を狙う。
ブロックアウトを取る。
相手守備を見てフェイントを落とす。
力だけに頼らず、状況に応じて攻撃を使い分けていた。
だが、この試合で特筆したい数字は別にある。
8ディグ。
日本だけではなく、両チームを通じて最多だった。
第2セットではワンハンドでボールを拾い、そこから深津のブロックポイントにつながった。
別のラリーでは、
西田ディグ
→ 髙橋トス
→ 石川のブロックアウト
という形で得点につながった。
第3セットにも、
西田ディグ
→ 深津ワンハンドトス
→ 髙橋が決める
という一本があった。
試合後、西田自身もディフェンスについて触れている。
「Aパスじゃなくてもコート内に残して、点数に結びつけることができてよかった」
完璧に上げることだけを求めるのではない。
まずボールを落とさない。
コート内に残す。
誰かが次につなぐ。
今日の日本を象徴する考え方の一つだった。
小野寺太志|4アタック+2ブロック+3エース、広がった仕事の幅

小野寺は9得点。
内訳を見ると面白い。
アタック4
ブロック2
サービスエース3
中央でクイックを決め、ネット際ではブロック。
さらにサーブでも直接3点を奪った。
守備でも、韓国のクイックをディグする場面があった。
そして試合後、小野寺自身が「サーブで効果を出せたのも良かった」と振り返っている。
もう一つ注目したいのが、深津とのコンビだ。
小野寺は「深津とのコンビも精度が上がってきている」と話した。
実際、好レセプションから深津が中央を選択し、小野寺がほぼ相手ブロックに捕まらず打ち切る場面もあった。
そして小野寺のサーブは、後に第3セット最大の転換点を作ることになる。
深津英臣|サーブで流れを作り、配球でブロックを散らした

第2セットの7-0だけではない。
深津のサーブは、この試合を通して韓国のレセプションにプレッシャーをかけた。
レセプションが返れば中央を使う。
崩れればハイボールを託す。
ラリーの中では、自らディグにも入る。
第3セットには西田が拾ったボールへ走り込み、ワンハンドで髙橋へトスを供給した。
小野寺が試合後に語ったように、中央とのコンビ精度も上がっている。
相手ブロックに「どこへ上がるのか」を絞らせなかったことが、日本の43本のアタック得点を支えていた。
エバデダン・ラリー|4/4のクイックと、エースにならなかったサーブ

エバデダン・ラリーはアタック4/4。
4本打って4本を決めた。
さらにブロック1得点。
だが、この日の貢献を語るなら、サーブも外せない。
第2セット中盤。
エバデダン・ラリーのサーブで韓国を崩す。
西田がワンハンドで好ディグ。
最後は深津がブロック。
次のサーブでも崩し、小野寺がシャットアウト。
さらに次も崩し、西田のディグから髙橋がトスを上げ、石川がブロックアウトを取った。
第3セットでも、エバデダン・ラリーのサーブから韓国の攻撃を何度も難しくした。
公式記録上、サービスエースは0本。
しかし、エースにならなかったサーブが、何度も日本の得点の起点になった。
試合後には、
「点数的にも余裕をもってプレーできた。みんなのおかげ」
とチームメイトへの感謝を口にした。
その言葉通り、この日の日本は一つのプレーが次のプレーへつながり続けていた。
第3セット 1-5→8-6|韓国の修正を、日本がさらに修正した
ここまで圧倒的な展開だった日本にも、苦しい時間はあった。
第3セット開始直後だ。
韓国はブロックで日本の攻撃を捕まえた。
髙橋の攻撃を止めて0-1。
続いて西田のバックライトをブロックして0-2。
さらにもう一度、西田のバックライトを止めて0-3。
日本は3連続失点。
その後も韓国に先行され、1-5となった。
試合後、西田はこの時間帯について自ら触れた。
「2セット目まで良かったが、3セット目3本止められた。そこは課題にしたい」
25-14で終わったセットにも、課題は確かにあった。
だが、この試合で重要なのはここからだ。
流れを変えたのは髙橋だった。
前へ落とすショートサーブ。
韓国のレセプションを崩し、サービスエース。3-5。
石川がAパスからレフトへ入り、クロスを打ち抜く。
そして小野寺のサーブターン。
韓国を崩す。
ブロックタッチを取り、最後は石川が相手守備を見てフェイント。
5-6。
もう一度、小野寺がサーブで崩す。
韓国のスパイクがアウト。
6-6。
そして次の一本。
小野寺がコーナーいっぱいへサーブを突き刺す。
サービスエース。7-6。
1-5から、日本が逆転した。
韓国はタイムアウト。
しかし小野寺のサーブは止まらない。
再びレセプションを崩し、チャンスボールを作る。
最後はエバデダン・ラリーのクイック。
8-6。
1-5から8-6。
日本は7-1のランで、試合の流れを取り戻した。
強いチームとは、最初から最後まで一度も崩れないチームなのか。
この第3セットを見る限り、そうではない。
相手が修正してくる。
自分たちの攻撃が止められる。
それでも、何が起きているのかを整理し、別の方法で流れを取り戻す。
韓国の修正に対して、日本がさらに修正した。
決勝を前に、その力を確認できたことは、25-14というスコア以上に意味があった。
SERVE 10-2、ATTACK 43-19|なぜ韓国の攻撃は機能しなかったのか
試合全体へ視点を戻そう。
日本のサービスエースは10本。
内訳は、
小野寺 3
石川 3
髙橋 2
大塚達宣 1
富田 1
韓国は2本だった。
しかし、日本のサーブの価値を「10本」で終わらせると、この試合を見誤る。
深津が崩した。
エバデダン・ラリーが崩した。
エースにならなくても、韓国のレセプションをネットから離し、セッターの選択肢を減らすサーブが何度もあった。
韓国で多くのレセプションを受けたホ・スボンは、公式スタッツで23本を受け、6エラー。
そして攻撃を見ると、さらに差が鮮明になる。
日本のアタック得点は43。
韓国は19。
韓国の中心選手だったホ・スボンは、アタック4/11。
イム・ドンヒョクは5/25だった。
特にイム・ドンヒョクは25本もの攻撃を任されながら、アタック得点は5。
だが、これを単純に「韓国のエースが不調だった」で片付けるべきではない。
日本はまずサーブで攻撃条件を悪くした。
韓国の攻撃が限定されれば、日本のブロックは相手を追いやすくなる。
ブロックで直接止められなくても、ワンタッチを取る。
あるいはコースを絞る。
その後ろでディグする。
そして日本が再び攻撃する。
だからこそ、公式スタッツのBLOCK 8-6だけを見ると、この日のブロックディフェンスの価値を過小評価することになる。
日本のディグはチームで40。
その中には、西田の8、深津と髙橋の5、山本の4、石川の3などが含まれる。
サーブだけではない。
ブロックだけでもない。
ディグだけでもない。
SERVE → BLOCK → DIG → TRANSITION。
一つひとつがつながった結果として、日本は韓国のアタック得点を19に抑え、自分たちは43点を奪った。
75-38という大差は、一つの武器だけで生まれたものではなかった。
最後の1点に表れた「誰が出ても強い」|途中出場組が完成させた勝利
第3セット終盤。
日本は大きくメンバーを動かした。
宮浦健人。
西本圭吾。
河東祐大。
富田将馬。
そして石川に代わって入っていた大塚達宣。
それでも、日本のバレーは止まらなかった。
大塚のAパスから河東が中央を選択し、西本がクイックを決めて22-14。
続いて大塚。
エンドラインぎりぎりへサーブを落とし、サービスエース。23-14。
大塚のサーブは続く。
そして今度は西本がブロックポイント。
西本が吠える。
24-14。マッチポイント。
そして最後のラリー。
大塚のサーブから始まった。
韓国のツーアタックを、大塚がディグ。
日本は宮浦へ。
宮浦がライトから打つ。
韓国もつなぐ。
ラリーは終わらない。
次のボールを河東がディグ。
山本が上げる。
最後に打ったのは、富田だった。
25-14。
試合終了。
記録上、最後の得点を決めたのは富田将馬だ。
しかし、その一点に触れた選手を追っていくと、この日の日本そのものが見えてくる。
拾う。
上げる。
打つ。
また拾う。
また上げる。
そして別の誰かが決める。
試合後、石川はこう振り返った。
「前半からこちらがリードできていたので、他の選手が入るチャンスもあった。出た選手はしっかり活躍できていた」
その言葉を象徴するような、最後の一点だった。
最後の一点を取ったのは、記録上は富田将馬。
でも、その一点を作ったのは日本だった。
25-13、25-11、25-14でも、選手たちは満足していない
3セットで韓国に許した得点は38。
一度も20点台に乗せなかった。
それでも試合後、選手たちの視線はすでに次へ向いていた。
石川は、
「しっかりと良い形で決勝に進める。明日が本当の勝負なので、しっかりリカバリしたい」
と話した。
そして試合前には、
「あと2戦なので、しっかり出し切ろう」
とチームメイトに伝えていたという。
自身についても「準決勝は非常に良い形で終始できていた」と手応えを語りながら、
「明日はもっと熱さを出していきたい。今日以上の熱さ・パフォーマンス・集中力、すべてを出し切りたい」
と、その先を見た。
西田は、自身が第3セットで3本ブロックされたことを課題に挙げた。
小野寺も、韓国について「粘り強く攻撃力もある」としたうえで、
「粘り負けせず、どんな状況でも1点1点積み重ねるという思いで臨んだ」
と振り返った。
決勝についても、
「1点1点を良い形で積み重ねる。そこにフォーカスしたい」
と語った。
圧勝したから、完成したわけではない。
良かったところを認識しながら、同時に次の課題を見る。
3連戦という難しい日程の中で3-0で準決勝を終えられたことも、決勝へ向けて大きい。
石川も「時間もあるので準備できる」と話している。
そして、いよいよ残るのは決勝だ。
決勝はイラン|「必ずLA五輪への切符を勝ち取る」
決勝の相手はイラン。
石川は、VNLでもフルセットを戦った強敵であることに触れた。
小野寺も、
「イラン戦はレベルの上がった試合になると思う」
と警戒する。
そして、その試合に懸かるものは大きい。
西田は言った。
「パリで悔しい思いをしたので、ここで切符を取るのが非常に大切」
結果を求められる。
プレッシャーもある。
それでも西田は、
「チームとして結果を求めないといけないが、それよりも自分たちがやっていることに自信をもって臨みたい」
と続けた。
小野寺の言葉も印象的だった。
「負けたら終わり、出場権がかかっているが、そんな中でもバレーボールを楽しみたい」
勝たなければならない。
それでも、目の前の一点に集中する。
自分たちが積み上げてきたものを信じる。
そして、バレーボールを楽しむ。
韓国戦では、その積み重ねが25-13、25-11、25-14というスコアになって表れた。
石川15得点。
髙橋14得点。
西田10得点と8ディグ。
小野寺3エース。
エバデダン・ラリーはアタック4/4。
チームでは10本のサービスエース、40ディグ。
そして最後は、途中出場の選手たちまでがボールをつないで勝利を完成させた。
ここまでのすべては、決勝へ進むためのものだった。
だが、石川が言うように、
「明日が本当の勝負」
だ。
最後にキャプテンは、はっきりと言い切った。
「どんな状況でも必ず勝つ。必ずLA五輪への切符を勝ち取る」
日本は、アジアの頂点へ。
そして、LAへ。
あと一つ。



