女子バレー日本代表の2026女子アジア選手権は、銅メダルで幕を閉じた。
大会成績は6試合5勝1敗。
香港、韓国、ベトナムとの予選ラウンドを3戦全勝で突破すると、準々決勝でも台湾に3-0で勝利。大会開幕から4試合連続、12セットを落とさず準決勝まで進んだ。
準決勝ではタイに1-3で敗れ、目標としていたアジア王座と、優勝チームに与えられるロサンゼルス2028オリンピック出場権には届かなかった。
翌日の3位決定戦ではイランに3-0で勝利。
最終成績は、
6試合
5勝1敗
16セット獲得・3セット喪失
銅メダル
となった。
結果だけを見れば、唯一の敗戦となったタイ戦が大きく映る。
しかし、大会全体の公式スタッツを見ると、別の景色も見えてくる。
得点では和田由紀子が5位。
ブロックでは山口真季が4位。
サーブでは和田が2位。
セットでは関菜々巳が2位。
ディグでは福留慧美が2位。
レセプションでは石川真佑が1位タイ。
攻撃、ブロック、サーブ、セット、守備。
日本の選手はさまざまな部門で大会上位に入った。
和田はベストオポジットにも選出され、主力だけではなく途中出場の選手たちも、それぞれの特徴をコートで発揮した。
今大会の日本に、武器がなかったわけではない。
むしろ、数字を見れば強みは数多くあった。
では、その一つ一つの強みを、日本はチームとしてどこまで生かすことができたのか。
公式スタッツと、VB Insightで追ってきた6試合の内容から、日本がアジア選手権で見せた現在地を振り返る。
- 5勝1敗、16セット獲得――6試合で残した結果
- 数字で見る日本――各部門に並んだ日本選手
- 和田由紀子――87得点、サーブ2位、そしてベストオポジット
- 佐藤、石川、島村――同じ「得点源」でも異なる強み
- 大きな収穫――交代選手が「違う武器」を持っていた
- ここまで数字はある。では、その強みをどう「つなぐ」のか
- タイ戦の「61-57」――個の攻撃力だけでは説明できない敗戦
- タイ戦で突然始まった話ではない
- 一本目、二本目、三本目――数字と数字の「あいだ」
- 敗戦翌日、最後まで「つないだ」銅メダル
- 石川真佑が語った「人と人との見えないところのつながり」
- LA28へ――「個」の強さを、もっと強い「チーム」へ
- まとめ|武器は見えた。次は、それをどうつなぐか
5勝1敗、16セット獲得――6試合で残した結果
まずは大会全体を振り返りたい。
| 試合 | 対戦相手 | 結果 |
|---|---|---|
| 予選 | 香港 | ○ 3-0 |
| 予選 | 韓国 | ○ 3-0 |
| 予選 | ベトナム | ○ 3-0 |
| 準々決勝 | 台湾 | ○ 3-0 |
| 準決勝 | タイ | ● 1-3 |
| 3位決定戦 | イラン | ○ 3-0 |
開幕の香港戦では75-36と大差をつけて勝利。
韓国戦では第1セットが33-31までもつれながら取り切り、ベトナム戦では秋本美空が初先発で16得点。
準々決勝の台湾戦では和田由紀子が19得点、石川真佑が14得点を記録し、チームでも11本のブロックを奪った。
準決勝のタイ戦で今大会初黒星を喫したものの、翌日のイラン戦を3-0で勝ち切って銅メダルを獲得した。
4試合連続ストレート勝利。
そして敗戦後にも3-0で勝利。
優勝という目標には届かなかったが、6試合中5試合を勝ち、19セット中16セットを奪ったことも、日本が今大会で残した一つの事実だ。

数字で見る日本――各部門に並んだ日本選手
今大会の日本を評価するうえで、まず注目したいのが大会個人ランキングだ。
Volleyball Worldの公式スタッツから、日本勢の主な上位選手を抜き出すとこうなる。
| 部門 | 日本勢の主な上位 |
|---|---|
| 総得点 | 和田由紀子 5位・87点/佐藤淑乃 8位・72点/石川真佑 9位・69点/島村春世 13位・51点 |
| アタック得点 | 和田 5位・71点/佐藤 8位・63点/石川 9位・56点/島村 13位・42点 |
| ブロック得点 | 山口真季 4位・10本/島村 6位・8本/石川 6位・8本/和田 7位・7本 |
| サービスエース | 和田 2位・9本/石川 5位・5本 |
| セット成功 | 関菜々巳 2位・138本 |
| ディグ | 福留慧美 2位・63本/和田 5位・53本/石川 7位・48本/関 8位・47本 |
| レセプション成功 | 石川 1位タイ・57本/佐藤 5位・26本/福留 10位・20本 |
もちろん、これらのランキングだけで各国の選手やチーム力を単純比較することはできない。
出場試合数やプレー機会、相手から狙われた回数なども数字に影響する。
それでも興味深いのは、特定の一部門だけではなく、ほぼすべてのプレー領域で日本選手が上位に入っていることだ。
アタックする選手がいた。
ブロックで止める選手がいた。
サーブで得点する選手がいた。
ボールを繋ぐ選手がいた。
レセプションを担う選手がいた。
セットする選手がいた。
一つ一つを切り取れば、日本には大会上位に入るだけの力を発揮した選手が複数いた。

和田由紀子――87得点、サーブ2位、そしてベストオポジット
その中でも、今大会を代表する活躍を見せたのが和田由紀子だ。
大会通算は、
総得点 87点
アタック得点 71点
ブロック得点 7点
サービスエース 9本
総得点87は大会5位。
アタック得点71も5位。
さらに9本のサービスエースは大会2位だった。
大会終了後には、ベストオポジットにも選出された。
準々決勝の台湾戦では、25本のアタックから17得点。
単純なアタック決定率は68.0%で、アタックミスは0だった。
韓国戦では19得点。
イランとの3位決定戦でも19得点を記録している。
さらに公式ディグランキングでも53本で大会5位。
得点するだけではなく、サーブや守備まで含めて複数の局面に関わった。
87得点という数字だけではなく、さまざまな形で試合に影響を与えたことが、ベストオポジットという評価にもつながったと考えたい。

佐藤、石川、島村――同じ「得点源」でも異なる強み
和田だけではない。
佐藤淑乃は72得点で大会8位。
そのうちアタック得点は63で、こちらも大会8位だった。
香港戦で17得点、韓国戦では18得点。
加えてレセプション成功数でも大会5位に入り、サイドから攻撃するだけではなく、サーブレシーブも担った。
石川真佑は69得点で大会9位。
内訳はアタック56、ブロック8、サービスエース5。
そして石川の場合、得点だけを見ると大会での役割を十分には表せない。
ブロック6位。
サーブ5位。
ディグ7位。
レセプション成功数は57本で大会1位タイ。
準決勝タイ戦では23得点を挙げながら、49本のサーブレシーブを受けてエラー0。
攻撃だけでなく、レセプション、ディグ、ブロック、サーブと多くの局面を担った。
そして島村春世。
大会通算51得点のうち、アタック得点は42。
69本のアタックに対して42得点で、単純なアタック決定率は60.9%。
さらに8ブロックで大会6位に入った。
サイドから得点する和田、佐藤、石川。
中央から高い確率で得点した島村。
主力それぞれが違う武器を数字として残した大会だった。
大きな収穫――交代選手が「違う武器」を持っていた
そして今大会で特に評価したいのが、スターティングメンバー以外の選手たちだ。
単に主力を休ませるための交代ではない。
試合を変えるための交代が機能した。
韓国戦。
第1セットは30点を超える競り合いとなったが、最後の33点目を決めたのは途中出場の鴫原ひなただった。
第2セットでは北窓絢音のサーブから連続ブレイク。
ベトナム戦では秋本美空が初先発し、両チーム最多の16得点を挙げた。
最後の25点目も秋本だった。
台湾戦では山口真季が4ブロック。
大会通算でも山口は10ブロックで大会4位に入った。
山口の大会総得点は22。
そのうち実に10点がブロックによるものだった。
タイ戦では0-2と追い込まれた第3セットからメンバーを変更。
鴫原、山口らを起用し、日本は25-20でセットを奪い返した。
鴫原の守備とつなぎ。
山口のブロック。
秋本の攻撃力。
北窓の決定力やサーブ。
栄絵里香を投入してセッターそのものを変える選択肢もあった。
今大会の選手層とは、「14人いる」という意味だけではない。
違う特徴を持った選手を投入することで、試合の機能そのものを変えることができた。
この選択肢の広がりは、LA28へ向かう日本にとって大きな収穫だ。

ここまで数字はある。では、その強みをどう「つなぐ」のか
ここまで見てきた数字だけなら、日本には多くの強みがある。
得点5位の和田。
レセプション1位タイの石川。
ブロック4位の山口。
ディグ2位の福留。
セット2位の関。
高い確率で中央から得点した島村。
そして途中から試合を変えられる選手たち。
ただ、バレーボールはこれらを別々に競う競技ではない。
レシーブしたボールをセッターへ。
セッターからアタッカーへ。
サーブで相手を崩し、ブロックでコースを限定し、その後ろでボールを拾う。
ブロックタッチやディグから、もう一度セットし、再び攻撃する。
一つの強みを、次の強みへつないで初めて1点になる。
ここに、今大会の日本を考える重要なテーマがあったように思う。
タイ戦の「61-57」――個の攻撃力だけでは説明できない敗戦
それを最も分かりやすく示したのが、準決勝のタイ戦だった。
日本は1-3で敗れた。
しかし公式スタッツを見ると、
アタック得点 日本61-57タイ
ブロック得点 日本9-10タイ
サービスエース 日本2-0タイ
だった。
アタック得点では日本が4点上回っている。
サービスエースも日本が上回った。
石川は23得点。
個々の攻撃がまったく通用しなかった試合ではない。
それでも、4セットを通して勝ったのはタイだった。
試合を見ていて差を感じたのが、一度攻撃を止められた後の「作り直し」だ。
タイは日本のブロックに触れたボールやディグしたボールをもう一度セットへつなぎ、再攻撃まで持っていく場面があった。
日本にもブロックタッチやディグはあった。
ただ、その後のセットとアタッカーのタイミングが合わず、十分な助走や打点から強い攻撃まで持っていけない場面があった。
フェイントや軟打への対応でも、タイにラリーを継続される場面があった。
得点できるアタッカーがいることと、そのアタッカーが最も打ちやすい状態までボールを届けることは、同じではない。
大会ランキングに並んだ日本選手の数字と、タイ戦の61-57。
この二つを並べると、今大会の日本が次に高めたいものが見えてくる。

タイ戦で突然始まった話ではない
ただし、この「つながり」の問題をタイ戦だけの敗因として片づけるのも違う。
大会序盤から、日本は精度を高めようとしていた。
韓国戦後、関菜々巳はサーブで相手にAパスを返される場面が多かったことを振り返り、セッターとしてもコンビの精度を上げたいと話していた。
和田も試合の入り方や、要所で最後の1点を決め切る部分を修正点として挙げている。
ベトナム戦ではサーブで相手の攻撃を十分に限定できず、ブロード攻撃への対応に苦しむ時間帯があった。
台湾戦でも3-0で勝利した一方、第2セットにはトスとアタッカーのタイミングが合わず、十分な助走から打てない場面があった。
レセプション。
セット。
アタック。
サーブ。
ブロック。
ディフェンス。
個々のプレーには力がある。
だからこそ日本は4試合連続で3-0を積み重ねることができた。
その一方で、一つのプレーから次のプレーへ移る精度を、日本自身も大会中から高めようとしていた。
タイ戦で新しい問題が発生したわけではない。
アジアの頂点を争う相手との試合で、そのわずかなズレが勝敗を左右する差になった。
そう見る方が、この6試合の流れには合っている。
一本目、二本目、三本目――数字と数字の「あいだ」
例えばレセプションランキングでは石川が1位タイ。
セットランキングでは関が2位。
アタックランキングでは和田が5位、佐藤が8位、石川が9位。
それぞれを単独で見れば、大会上位の数字だ。
ただし、
良いレセプションが、そのまま良いアタックになるわけではない。
一本目から二本目へ。
二本目から三本目へ。
その間には、セッターの判断、トスの高さや速さ、アタッカーとのタイミング、助走、相手ブロックとの駆け引きがある。
サーブから始まる守備も同じだ。
良いサーブ。
ブロック。
ブロックタッチ。
ディグ。
セット。
再攻撃。
一つ一つの数字の「あいだ」を、どれだけ質の高いプレーでつなげられるか。
そこが強くなれば、今大会で数字に表れた日本の一つ一つの武器は、さらに大きな力になる。

敗戦翌日、最後まで「つないだ」銅メダル
準決勝で目標だった優勝への道が途絶えた。
翌日には3位決定戦があった。
決して簡単な状況ではなかったはずだ。
日本はイランに3-0で勝利した。
ただ、第3セットは苦しい展開だった。
17-20。
終盤には23-24とセットポイントを握られた。
そこから日本は追いついた。
24-24から最後の2点を決めたのは、キャプテンの石川真佑だった。
26-24。
ストレート勝利で銅メダルを決めた。
試合後、石川は、
「自分達の目指してたところには達してない」
と語った。
銅メダルだけで満足してはいない。
それでも、準決勝で敗れた翌日にもう一度コートに立ち、苦しい第3セットを逆転して大会を勝利で終えたことも、日本がこの6試合で見せた強さの一つだ。
石川真佑が語った「人と人との見えないところのつながり」
大会終了翌日の8月31日、日本代表は中国から帰国した。
帰国会見で石川が挙げたのは、技術面だけではなかった。
課題として語ったのが、チーム内のコミュニケーションだった。
石川は、
「人と人との見えないところのつながり」
について触れ、お互いが腹をくくって伝えるべきことを伝え切れていなかった部分があったと振り返った。
アクバシュ監督によれば、大会直後には選手、スタッフ全員でミーティングを行った。
それぞれの意見を聞き、提案に耳を傾ける時間を持ったという。
もちろん、試合中に見られたセットやコンビのズレを、コミュニケーション不足だけで説明することはできない。
技術、判断、タイミング、相手のプレーなど、多くの要素が絡んでいる。
だから、コート上の「プレーとプレーのつながり」と、石川が話した「人と人とのつながり」を、そのまま同じものとして扱うべきではない。
ただ、6試合を追って見えてきた一つのプレーを次へつなぐ精度。
そして大会を終えたキャプテンが語った、選手と選手の間にある見えないつながり。
日本が次の段階へ進むためのヒントが、その両方にあるようにも見える。
LA28へ――「個」の強さを、もっと強い「チーム」へ
改めて大会の数字を見る。
和田由紀子。
87得点で大会5位。9サービスエースで2位。ベストオポジット。
石川真佑。
69得点。レセプション成功数1位タイ。ブロック、サーブ、ディグでも上位。
佐藤淑乃。
72得点で8位。アタック得点63で8位。
島村春世。
42アタック得点。69本中42本を決める高い決定率。8ブロック。
山口真季。
10ブロックで大会4位。
福留慧美。
63ディグで大会2位。
関菜々巳。
セット成功138本で大会2位。
そして数字だけでは測れないところでも、鴫原ひなた、秋本美空、北窓絢音らが違う特徴を持って試合に入り、流れを変えた。
こうして並べると、今大会の日本に足りなかったものを「個の力」の一言で片づけることはできない。
むしろ、多くの武器があった。
だから次に目指すのは、その武器をもっと増やすことだけではない。
一つ一つの強みを、もっと強くつなぐこと。
レセプションをセットへ。
セットをアタックへ。
サーブをブロックへ。
ディグを再攻撃へ。
そして選手と選手を、一つのチームへ。
その精度が高まったとき、今大会で数字に残った個々の強みは、さらに大きな力になるはずだ。
まとめ|武器は見えた。次は、それをどうつなぐか
2026女子アジア選手権。
日本は6試合5勝1敗、16セット獲得・3セット喪失、銅メダルという成績で大会を終えた。
目標としていたアジア王座とLA28への切符には届かなかった。
その悔しさは残る。
一方で、公式スタッツには日本選手の名前が各部門の上位に数多く並んだ。
和田の得点力。
佐藤の攻撃。
石川の総合力。
島村のミドル。
山口のブロック。
福留の守備。
関のセット。
そして、試合の途中から違う機能をもたらした選手たち。
日本には、すでに多くの武器がある。
タイ戦は、その武器が通用しなかった試合ではない。
アタック得点では61-57と上回った。
それでも勝利には届かなかったからこそ、その武器を一本のラリーの中でどうつなぎ、チームの1点へ変えていくかという次のテーマが見えた。
一本目から二本目へ。
二本目から三本目へ。
守備から再攻撃へ。
そして、人から人へ。
大会後、石川真佑が語ったのも「人と人との見えないところのつながり」だった。
それぞれの強みが、より強くつながったとき。
このチームがどんなバレーボールを見せるのか。
LA28への切符を獲る機会はまだ残されている。
天津で手にした銅メダルと、数字に表れた多くの武器を次へ。
日本代表の挑戦は、ここからまた続いていく。

データ・参考資料
- Volleyball World「AVC Women’s Volleyball Continental 2026」大会公式ランキング
- Volleyball World 日本代表各選手個人スタッツ
- Volleyball World 日本代表全6試合公式スタッツ
- スポニチアネックス 2026年8月31日 日本代表帰国会見
※攻撃の「決定率」は、アタック得点÷総打数で単純計算。ランキング順位はVolleyball World公式スタッツに基づく。


