男子バレー日本代表、インドに3-0|髙橋藍4エース、石川祐希が流れを変えた準々決勝

男子バレー日本代表は9月11日、アジア選手権2026の準々決勝でインドと対戦し、3-0(25-17、25-15、25-19)で勝利した。

スコアだけを見ればストレート勝ち。

だが、すべての局面で日本がインドを圧倒した試合だったわけではない。

ブロック得点は日本の6本に対してインドが8本。第3セットには12-13とリードを許し、日本の攻撃がインドのブロックにつかまる場面もあった。

それでも、日本は崩れなかった。

第2セットでは髙橋藍のサーブから1-1→8-1。第3セットでは石川祐希のサーブを起点に12-13→19-13

二度の「7連続得点」が試合の流れを大きく動かした。

そして、その連続得点を生んだのはサーブだけではない。

西田有志が拾う。小川智大がつなぐ。深津英臣が相手ブロックを見ながら選択する。途中出場した河東祐大、宮浦健人、富田将馬、大塚達宣も、それぞれの役割を果たした。

数字に残る得点だけでは見えてこない、日本の「つなぐ力」。

準々決勝で見えた日本の強さを、試合の流れとスタッツから振り返る。

日本3-0インド|準々決勝をストレートで突破

日本 3-0 インド

  • 第1セット:25-17
  • 第2セット:25-15
  • 第3セット:25-19

チームスタッツを見ると、日本はアタック得点で42-26、サービスエースで7-1と大きく上回った。

一方、ブロック得点は6-8でインドが上回っている。

さらに目を引くのがディグだ。

日本の55本に対して、インドは34本。

インドのブロックに止められる場面がありながらも、日本はその前後のラリーでボールを落とさず、もう一度攻撃を作ることができていた。

項目日本インド
アタック得点4226
ブロック得点68
サービスエース71
相手ミスによる得点2016
ディグ5534

個人では髙橋藍が14得点でチーム最多。西田有志と石川祐希が12得点、エバデダン・ラリーが9得点で続いた。


第1セット|派手な得点より目立った「一本で終わらせない」日本

第1セット、日本は立ち上がりから髙橋藍が存在感を示した。

最初の得点は髙橋のレフトからのストレート。続いてブロックポイントを奪い、4-2ではライン際へサービスエースを決めた。

ただ、このセットでより印象に残ったのは、誰か一人の得点力よりも日本が簡単にボールを落とさなかったことだった。

3-2の場面。

髙橋の攻撃から始まったラリーで、西田のライト攻撃をインドが拾う。それでも日本はボールをつなぎ、最後はもう一度西田へ。

一本で決まらなくても、次の攻撃を作る。

この姿勢はセットを通して続いた。

13-11では、相手コートから返ってきたボールに対して深津がセットするような動きを見せながら、最後の瞬間に触らずに見送った。

ボールはそのままインドコートへ落下。

派手なプレーではないが、ボールの軌道と相手コートを見切った判断だった。

さらに17-13。

インドのフェイントに対し、西田が片手を伸ばしてボールをつなぐ。

オポジットの西田といえば強烈なスパイクやサーブが注目されることが多い。しかし、この日は守備でも何度も日本に「次の一本」を残した。

18-13ではさらに象徴的なラリーがあった。

石川の攻撃がブロックされたボールを髙橋がフォロー。インドの攻撃には小川が片手で反応し、その後は髙橋が右サイドへトスを上げて西田につないだ。

セッターだけがトスを上げるのではない。

リベロだけが拾うのでもない。

コートにいる全員が、その瞬間に必要なプレーを選択する。

日本は25-17で第1セットを取った。


髙橋藍のサーブで1-1から8-1|7連続得点が壊したインドのリズム

第2セット、試合の流れを一気に日本へ引き寄せたのが髙橋のサーブだった。

1-1から髙橋がサービスラインへ。

まずサーブで相手を崩し、インドの攻撃ミスを誘う。

続いてショートサーブ。

さらに強いサーブを織り交ぜ、インドのレセプションを揺さぶった。

5-1、6-1では連続サービスエース。

7-1ではサーブから日本がブロックタッチを取り、石川がレフトから決める。

そして8-1。

再び髙橋のサーブがインドのレセプションを崩し、このローテーションだけで3本目となるサービスエースが決まった。

1-1から8-1。

髙橋のサーブターンで、日本は7連続得点を奪った。

この試合の髙橋はチーム最多の14得点

内訳はアタック9得点、ブロック1得点、そしてサービスエース4本だった。

しかし、4本という数字だけでは、この日のサーブの価値をすべて説明できない。

エースにならなくても、相手のレセプションを崩せば攻撃の選択肢を減らすことができる。

日本はその返球をブロックやディグで拾い、もう一度自分たちの攻撃へつなげていた。

試合後、髙橋はこう振り返った。

「1、2セット目、自分がリズムを持ってくることができてよかった」

まさにその言葉どおりだった。

第2セット序盤、日本のリズムを作ったのは髙橋のサーブだった。


約5分の中断、「チャレンジ返し」で失わなかった1点

第2セットには珍しい場面もあった。

15-9の場面。

石川のバックアタックをめぐってインドがライン/フットフォルトをチャレンジし、判定が覆る。

しかし、そこで日本もチャレンジ。

日本が求めたのは、それより前に起きていたインド側のフロアタッチだった。

こちらもチャレンジ成功。

インド側のフロアタッチが先に発生していたため、日本の得点が認められた。

一度はインド側に傾いた判定を、ロラン・ティリ監督のチャレンジによって取り戻した形だ。

長い確認によって試合は中断。

直後、髙橋のサーブはネットにかかった。

長い中断が集中に影響したかどうかは断定できない。

ただ、その後の日本は流れを渡さなかった。

16-10では髙橋のAパスから、深津がライトの西田を選択。西田が鋭いクロスを決める。

17-10では小野寺太志がサービスエース。

そしてセット終盤には、日本の選手層の厚さが見えてくる。


深津から河東へ|選手が替わっても減らなかった攻撃の選択肢

第2セット後半、日本は宮浦、河東、富田らをコートへ送り込んだ。

そこで攻撃が単調になることはなかった。

西田のサーブでインドを大きく崩した19-12。

セッターではない小川がネット際へ入り、ジャンプしながらライトへトスを供給する。

そこへ入った宮浦がストレートを打ち切った。

リベロがただボールを上げるのではなく、アタッカーがしっかり打てるボールを供給する。

小川の技術が表れた一本だった。

その後、河東がコートへ。

最初に託したのは石川だった。

石川がレフトからストレートを決める。

さらにラリーの中では中央のエバデダン・ラリーを使い、24点目は小川のAパスから宮浦へ。

そしてセットポイント。

宮浦のサーブでインドを崩すと、返ってきたボールを河東が富田へ。

富田がバックアタックを決め、25-15

宮浦はアタック2本を2本、大塚は1本を1本、富田も1本を1本決めた。

試行数は少ない。

それでも、選手交代によって日本の攻撃の選択肢が極端に減らなかったことには意味がある。

「誰が出ても強い」。

今大会で何度も見えてきた日本の厚みが、このセットの最後にも表れていた。


第3セット|12-13。初めて追う展開になった日本

第3セットは、それまでとは少し違った。

日本は序盤からインドを突き放せない。

髙橋の攻撃がブロックされ、クイックがアウトになり、インドのブロックにもつかまった。

8-8。

9-9。

10-10。

11-11。

12-12。

互いにサイドアウトを重ねる展開が続く。

そして12-13。

エバデダン・ラリーのクイックがブロックされ、日本は1点を追う展開となった。

髙橋自身も試合後、この第3セットについて、

「3セット目、集中を切らしてしまったので、明日そういうことがないようにしたい」

と反省を口にしている。

ストレート勝ちの中にも、改善すべき時間帯はあった。

だが、その苦しい流れを変えたのがキャプテンだった。


石川祐希のサーブから12-13→19-13|主将が作った入口を、全員で得点に

12-13。

石川がレフトからストレートを打ち抜く。

13-13。

同点に戻した石川が、そのままサービスラインへ向かった。

ここから試合が動く。

石川のサーブでインドを崩し、相手の攻撃ミスを誘う。

続くサーブはエンドライン際へ落ち、サービスエース。

インドはタイムアウトを取った。

それでも流れは止まらない。

石川がサーブで崩す。

インドの攻撃を西田が拾う。

最後は髙橋が決める。

次はショートサーブでインドの攻撃を限定。

さらにサーブでプレッシャーをかけ、再び日本がトランジションから得点する。

そして19-13。

石川のサーブから崩れたインドの攻撃を、最後はエバデダン・ラリーがブロックした。

12-13から19-13。

第2セットの髙橋に続き、今度は石川のサーブを起点に日本が7連続得点を奪った。

ただし、この7点を「石川一人が取った」と表現するのは正確ではない。

石川がサーブで入口を作る。

西田が拾う。

髙橋が決める。

エバデダン・ラリーが止める。

石川のサーブを起点に、コート上の選手が役割を果たした結果として生まれた7連続得点だった。

日本には、一本のサーブから試合の流れを変えられる選手が複数いる。

それは準決勝以降を戦ううえでも大きな武器になる。


12得点だけでは見えない西田有志|オポジットが拾った「次の一本」

この試合の西田は12得点。

アタックは11得点で、11/24、決定率45.8%だった。

数字だけを見れば、チーム最多14得点の髙橋や、アタック11/17で決定率64.7%を記録した石川の方が目立つかもしれない。

だが、実際に試合を追うと、西田の価値は攻撃だけではなかった。

第1セット17-13。

インドのフェイントに対して片手を伸ばし、ボールを落とさない。

18-13の長いラリーでも守備に入り、第3セットの石川のサーブターンでもインドの攻撃をディグし、髙橋の得点へつないだ。

公式スタッツでも西田は6ディグ

チーム最多8ディグの小川に次ぐ数字で、髙橋と並んでいる。

さらに第2セット14-8では、インドの攻撃を1枚でシャットアウト。

攻撃を決めるだけではない。

ブロックで止め、後衛では拾い、そこからもう一度日本の攻撃を作る。

この日の西田を「12得点」だけで評価すると、大事な部分を見落としてしまう。


8ディグだけではない小川智大|「拾う」から「攻撃する」まで

その西田を上回り、日本最多の8ディグを記録したのが小川だった。

第1セットから安定したレセプションを見せ、ブロックされたボールへのフォローにも入る。

18-13ではインドのバックアタックに片手で反応。

そして第2セットには、先ほど触れた宮浦へのジャンプトスがあった。

リベロの役割は「拾った」で終わらない。

乱れたボールを、次のアタッカーが攻撃できるボールへ変える。

この日の小川は、その部分でも日本のラリーを支えていた。

試合後、小川は、

「目立ったミスがなかったのが良かった」

と振り返った。

だが、この試合では「ミスがなかった」以上の仕事をしていたように見える。

さらに小川は、同じリベロの山本智大について、

「自分も山本もロスにかける思いは強いので、切磋琢磨しあっている」

と語った。

代表のリベロは、どちらか一人だけの戦いではない。

互いに競争しながら高め合うことが、日本代表そのものの守備力につながっている。


深津英臣の「誰に上げるか」|数字には残らないセッターの仕事

もう一つ、スタッツだけでは評価しにくかったのが深津のトスワークだった。

第1セット10-7では、髙橋や石川、西田だけに偏らず、中央のエバデダン・ラリーを選択。

16-12では相手ブロックを1枚にした状態で石川へ託し、石川がストレートを決めた。

第2セット9-2も印象的だった。

小野寺のクイックから返ってきたボール。

深津はもう一度、小野寺を使った。

そして今度は得点。

一度で決まらなかったから別の選択肢へ逃げるのではなく、相手ブロックとの関係を見ながら再び中央を使う。

こうした選択によって、日本のサイドアタッカーが戦いやすい状況も生まれていた。

一方で、小野寺は試合後、

「セッターの深津とのコンビの精度は、チーム全員で上げていきたい」

と話している。

この日はミドル攻撃が機能した場面が何度もあった。

それでも、選手たちはその精度に満足していない。

準決勝以降、相手のブロックがさらに日本を研究してくることを考えれば、中央をどこまで脅威にできるかは重要になる。


4ブロックのエバデダン・ラリー|インドの高さに中央で対抗

中央ではエバデダン・ラリーの存在も大きかった。

9得点。

アタックは5/8、決定率62.5%

さらに日本のチームブロック6本のうち、4本を一人で記録した。

インドはチーム全体で8ブロックを奪い、この項目では日本を上回った。

だからこそ、日本側にも中央で相手を止められる存在がいたことは大きい。

特に第3セット。

12-13から始まった日本の連続得点を締めくくった19点目も、エバデダン・ラリーのブロックだった。

サーブで崩し、相手の攻撃を限定し、最後はブロックで仕留める。

日本がこの試合で見せた一つの理想形だった。


ブロックは6-8。それでも日本が75-51で勝った理由

最終スコアだけを見れば、日本の完勝と言っていい。

しかし、スタッツを細かく見ると、この試合の構造はもう少し面白い。

インドはブロックで8-6と日本を上回った。

主将Jeromeは11得点。

日本の攻撃をブロックで止め、中央やバックアタックから得点する場面もあった。

それでも、最終的な総得点は日本75、インド51。

24点の差がついた。

大きかったのは、

アタック 42-26。

サービスエース 7-1。

そして、

ディグ 55-34。

だった。

日本は止められても、その次のボールを拾った。

拾ったボールを深津だけでなく、小川や髙橋もつないだ。

サーブで相手のレセプションを崩し、攻撃の選択肢を限定した。

そして最後は石川、髙橋、西田だけではなく、中央や途中出場の選手まで得点した。

一つひとつは、必ずしも得点としてスタッツに残るプレーではない。

ブロックフォロー。

ワンハンドディグ。

二段トス。

相手ブロックを1枚にするセット。

サーブで崩したことで生まれた相手のミス。

そうした「得点の一つ前、二つ前」のプレーを積み重ねた結果が、3-0というスコアにつながった。


準決勝は韓国戦|「挑戦者の気持ち」で、勝つだけ

日本はインドを3-0で下し、準決勝へ進んだ。

しかし、選手たちの視線はすでに次へ向いている。

髙橋は、第1、第2セットで自らリズムを作れたことを評価する一方、第3セットについては「集中を切らしてしまった」と反省した。

小野寺は深津とのコンビについて、さらに精度を上げる必要性を口にした。

そして小川は準決勝の相手・韓国について、

「韓国も良いバレーをしていたので、挑戦者の気持ちで戦いたい」

と語った。

ストレート勝ちだからといって、完成したわけではない。

良かった部分を残し、足りなかった部分を修正する。

それを繰り返しながら、日本は次の一戦へ進む。

最後に、西田が残した言葉はシンプルだった。

「勝つだけなので、応援よろしくお願いします」

準決勝。

ここから先に必要なのは、まさにそれだけだ。

勝って、決勝へ。

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