男子バレーボール日本代表は、アジア選手権2026の初戦でオマーンと対戦し、セットカウント3-1で勝利した。
25-18、25-13、20-25、25-9。
第1、第2セットを連取した日本だったが、第3セットはオマーンの多彩な攻撃とブロックに苦しみ20-25。今大会初めてセットを失った。
それでも第4セットは25-9。相手に傾いた流れを引きずることなく、一気に試合を決めた。
石川祐希と髙橋藍がともに19得点。サービスエースは2人で計10本。
ただ、この試合で見えた日本の強さは、2人の数字だけではない。
河東祐大の代表デビュー、西本圭吾の雄叫び、エバデダン・ラリーのブロック、富田将馬のサーブ、そして山本智大の好守。
「誰が出ても強い」。
そんな日本の厚みが見えた一方、世界ランキングで大きく上回る日本から第3セットを奪ったオマーンの戦いぶりも、しっかり記憶しておきたい初戦となった。
日本3-1オマーン|試合結果とスタッツ

| 日本 | オマーン | |
|---|---|---|
| セット | 3 | 1 |
| 第1セット | 25 | 18 |
| 第2セット | 25 | 13 |
| 第3セット | 20 | 25 |
| 第4セット | 25 | 9 |
| アタック得点 | 46 | 42 |
| ブロック得点 | 10 | 7 |
| サーブ得点 | 11 | 1 |
| 相手ミスによる得点 | 28 | 15 |
| 総得点 | 95 | 65 |
最終的な総得点は95-65。
30点差がついた最大の要因のひとつが、11-1となったサービスエースだった。
一方で注目したいのが、アタック得点は46-42とわずか4点差だったことだ。
スコアだけを見れば日本の快勝。しかし、攻撃そのものではオマーンも日本に迫っていた。
その事実が、20-25となった第3セットにもつながっている。
11-1|日本を走らせた強烈なサーブ
この日の日本最大の武器は、間違いなくサーブだった。
チームで記録したサービスエースは11本。
そのうち、
- 石川祐希:5本
- 髙橋藍:5本
2人だけで10本を記録した。

ただし、数字以上に印象的だったのはサーブの使い分けだ。
髙橋は第1セット、相手レセプションの間へ落とすショートサーブで2本連続のノータッチエース。
第2セットでもショートだけではなく、強烈なサーブを織り交ぜながらオマーンのレセプションを揺さぶった。
そして石川が圧巻だった。
第2セット終盤。
強烈なサーブでエースを奪うと、もう一度エース。
今度はショートサーブで崩して小野寺太志のクイックにつなげ、さらにサーブで崩して宮浦健人の得点を生む。
再びエースを奪い、ショートサーブから小野寺のブロックへ。
石川のサーブターンで、日本は7連続得点。
エースだけではない。
強打とショートを使い分け、相手の攻撃そのものを制限していった。
まるで、石川がコートを支配しているような時間だった。
髙橋藍|19得点。フェイクセットと「左手」にも表れた引き出しの多さ

髙橋藍は石川と並ぶチーム最多の19得点。
内訳はアタック14、サービスエース5。
アタックは20本中14本を決め、決定率70.0%を記録した。
だが、この日の髙橋を19という数字だけで説明するのは難しい。
印象的だったのが第2セット。
サーブでオマーンを崩したあと、自ら攻撃できるボールに入った髙橋は、ツーアタックを打つような動きを見せる。
ところが――打たない。
フェイクセット。
ボールはライトの西田有志へ。
西田がストレートへ打ち抜き、日本の得点となった。
そして第4セットには、さらに意表を突くプレーが飛び出す。
山本の好ディグから、スパイクフォームへ入った髙橋。
右手で打つように見せながら、最後は左手で柔らかくボールを落とした。
強烈なクロスもある。
バックアタックもある。
相手のいない場所へ落とすフェイントもある。
サーブでは強打とショートを使い分け、守備でも7ディグを記録した。
第2セットには長いラリーの中で何度もボールの落下地点へ入り、「そこにもいるのか」と感じさせるような好守もあった。
強く打つだけではない。
この日の髙橋には、攻守にわたる「引き出しの多さ」が詰まっていた。
石川祐希|19得点。苦しい時間を切り、良い時間を加速させた主将
石川も髙橋と並ぶ19得点。
アタック13、ブロック1、サービスエース5を記録した。
第1セット序盤の長いラリーでは、何度決まらなくても石川へボールが託された。
3本連続で石川。
最後は強烈なスパイクを叩き込み、日本の最初の1点を奪った。
強打だけではない。
オマーンの守備位置を見てフェイントを落とし、ブロックタッチも巧みに利用する。
そして何より、流れを変えたのがサーブだった。
前述した第2セットの7連続得点。
第3セットでもノータッチエースを奪い、苦しい終盤にはレフトからストレートを打ち抜いてオマーンの流れを切った。
第4セットでも、オマーンに3連続得点を許して11-6となった直後、石川がストレートを決めてサイドアウト。
さらに次のサーブではレシーブを弾き飛ばしてエースを奪った。
苦しい時間を自らの一撃で切る。
日本が走っている時間は、さらに加速させる。
キャプテンの存在感が随所に表れた初戦だった。
46-42|第3セットは「日本が落とした」だけではない

日本にとって反省材料となるのが、20-25で落とした第3セットだ。
予選ラウンドの順位は、その後の決勝ラウンドの組み合わせにも影響する。
できるだけセットを落としたくない日本にとって、決して軽く扱える1セットではない。
ただ、このセットを単純に「日本が崩れて落とした」と片付けるのも違う。
オマーンが良かった。
試合全体のアタック得点は、日本46に対してオマーン42。
オマーンではM.Alasaadiがアタック11得点、Fallahが10得点、Majidが9得点。
さらにOsamaは14本中8本のアタックを決め、決定率57.1%。ブロックでも4得点を記録し、計13得点を挙げた。
第3セットではバックライトから何度も日本の守備を破った。
レフト、ライト、バックセンター、ミドル。
Aパスが返れば複数の攻撃手を使い、ハイボールになってもサイドの選手が簡単には得点機会を手放さない。
日本が3枚ブロックを揃えても、ブロックアウトを取る。
ブロックの間を抜く。
そして終盤には逆に、日本の石川や髙橋の攻撃をブロックで止めた。
観戦上ではセッターを複数起用し、交代後に攻撃のリズムが変わったように感じられる時間帯もあった。
16-16からオマーンが抜け出し、最後はミドルのクイックで25点目。
世界ランキングの差に臆することなく攻め続け、オマーンが自ら奪った第3セットだった。
だからこそ、日本にとっても価値のある20-25にしなければならない。
「誰が出ても強い」|数字の外にもあった日本の厚み
この試合で強く感じたもうひとつの日本の持ち味が、選手層の厚さだった。
スタートは深津英臣、小野寺太志、山内晶大、石川祐希、髙橋藍、西田有志、リベロ山本智大。
そこから日本は次々と選手を送り込んだ。

河東祐大|初舞台でも攻めたトスワーク
特に印象に残ったのが、A代表で初めてコートに立った河東祐大だ。
第2セット途中から投入されると、最初のセットアップで選んだのは髙橋へのパイプ。
これを髙橋が決めると、笑顔も見えた。
その後は小野寺のクイック、宮浦のライトと配球を散らす。
セット最後には、山本の好ディグから崩れたボールに入り、ワンハンドで小野寺へトス。
小野寺がクイックを決め、25-13となった。
公式スタッツの「SET」だけを見れば、深津の34ポイントに対して河東は4ポイント。
だが、初めての代表のコートで見せた落ち着きや、攻撃的な選択は、その数字だけでは伝わらない。
西本圭吾|ブロック、クイック、そして雄叫び
第4セットから投入された西本圭吾も、すぐに仕事をした。
ブロックでオマーンの攻撃に圧力をかけると、シャットアウトを決めた瞬間には大きく雄叫び。
第3セットを落とした直後のチームを、プレーと声の両方で鼓舞した。
さらにクイックを決めた場面では、西本が石川へ詰め寄り、顔面ゼロ距離と言えるほどの距離で雄叫びを上げた。
数字は2得点。
それでも、あの時間帯でチームに与えたエネルギーは「2」だけでは測れない。

ラリー、富田、宮浦も結果を残す
エバデダン・ラリーは2得点。その2点はいずれもブロックだった。
富田将馬は第1セット終盤にリリーフサーバーとして入り、立て続けにオマーンを崩した。
宮浦健人は途中出場ながら、アタック5本中4本を決めて決定率80.0%。ライトだけでなくバックライトからも得点した。
そして山本智大。
公式スタッツでは11ディグでチーム最多。
試合中は何度も好ディグを見せただけでなく、二段トスから石川や西田の得点にもつなげた。
一人が抜けても、別の選手が役割を果たす。
スターターだけで試合を完結させなかったことも、この初戦の大きな収穫だった。
西田有志は14得点|第4セットに膝付近を接触
西田有志はアタック11、ブロック2、サービスエース1の14得点。
アタックは18本中11本を決め、決定率61.1%だった。
ライトからの強烈なクロスやストレートだけでなく、トスが合わなかった場面では軟打へ切り替えて空いたスペースへ落とすなど、状況に応じたプレーも光った。
一方、第4セット序盤にはネット際の交錯で膝付近を接触し、コート上に倒れ込む場面があった。
一度は立ち上がってプレーを続けたものの、その後は宮浦と交代した。
試合後には膝の状態を検査することが伝えられており、現時点では状態について憶測せず、今後の情報を待ちたい。
20-25を、次の勝利につなげられるか
第3セットを20-25で落とした日本。
しかし、その直後の第4セットは25-9だった。
ここにも、この日の日本の強さがある。
第4セットから入った西本がブロックで流れを作る。
ラリーもブロックを決める。
宮浦が得点する。
髙橋はバックアタックからフェイントまで自在に使い、石川は再びサーブで流れを引き寄せる。
オマーンが第3セットで見せた攻撃に対して、日本はセット間で立て直し、一気に16点差まで広げた。
だからこそ、第3セットを「なかったこと」にしてはいけない。
誰が出ても強い。
その日本の持ち味が存分に出た初戦だった。
同時に、自分たちより世界ランキングで大きく上位の日本を相手に攻撃の手を緩めず、1セットを奪い取ったオマーンから、日本が得られるものもあったはずだ。

まとめ|勝利を喜び、次へ
試合後、石川は英語でインタビューに応じた。
初戦の難しさに触れながら、この勝利を喜び、それでも意識はすでに次の試合へ向いていた。
アジア選手権の初戦は3-1。
完璧なストレート勝利ではなかった。
だからこそ、収穫も課題もあった。
そして試合が終われば、西田がオマーンの選手と記念撮影。石川もオマーンの監督と写真に収まる、微笑ましい光景が見られた。
コートの中では互いに一歩も譲らず、試合が終われば互いを称える。
日本の強さだけではなく、オマーンの健闘まで含めて記憶に残る初戦だった。
次戦は9月6日、バーレーン戦。
日本はこの1勝と、落とした1セットの両方を持って進んでいく。


