女子アジア選手権2026・3位決定戦。
日本はイランを3-0(25-21、25-16、26-24)で破り、銅メダルで大会を終えた。
第1、第2セットを連取した日本だったが、第3セットは17-20と追う展開に。23-24ではイランにセットポイントを握られた。
それでも最後は逆転。
そして、日本の今大会最後の2点を決めたのはキャプテン・石川真佑だった。
試合後、石川はこう語った。
「自分達の目指してたところには達してない」
銅メダルを獲得した。それでも、目指していた場所には届かなかった。
3位決定戦で見えた日本の現在地と、キャプテンとして大会を戦い抜いた石川真佑の姿を振り返る。
日本3-0イラン。すべての得点項目で上回る

日本は第1セットを25-21、第2セットを25-16で奪い、第3セットも26-24で競り勝った。
公式スタッツでは、日本が主要な得点項目すべてでイランを上回っている。
| 得点項目 | 日本 | イラン |
|---|---|---|
| アタック | 50 | 41 |
| ブロック | 7 | 4 |
| サーブ | 4 | 3 |
| 相手ミス | 15 | 13 |
最多得点は和田由紀子の19得点。
15本のアタック得点に加えて2ブロック、2サービスエースを記録した。
さらに存在感を見せたのが島村春世だ。
12本のアタック得点と2ブロックで14得点。
アタックは16本中12得点、Efficiencyは68.75%。ブロードやクイックを中心に得点を重ね、日本の攻撃を支えた。

山口真季もチーム最多となる3ブロックを記録。
観戦中にも、石川のサーブでイランのレセプションを崩し、山口のブロックにつなげる場面が見られた。
派手な数字が並んだ試合ではない。
それでも日本は、サイドだけに頼ることなく、ミドルやブロック、サーブも使いながらイランを上回った。
3-0でも残った「コンビのズレ」
一方、スコアだけでは見えない課題も残った。
そのひとつが、トスとアタッカーのタイミングだ。
この試合では関菜々巳とアタッカー・ミドルの間で、トスと助走が噛み合わない場面が何度か見られた。
完全に攻撃が成立しないだけではなく、予定していた強打が打てず、フェイントのような形で返す場面もあった。
もちろん、これはセッターだけの問題ではない。
レセプションの位置、アタッカーの助走、トランジションから攻撃へ移る時間など、コンビには複数の要素が関係する。
実際、タイとの準決勝でも同様に攻撃のタイミングが合わない場面が見られていた。
イラン戦を3-0で勝ち切った一方で、コンビの精度という課題が完全に解消されたわけではなかったことは、この試合からも感じられた。
レセプションの数字だけでは見えないもの
レセプションにも似たことが言える。
公式スタッツでは、
- 石川真佑:Efficiency 42.86%
- 福留慧美:29.17%
- 佐藤淑乃:55.56%
となっている。
日本のレセプションが完全に崩された試合だったわけではない。
レセプションの乱れが目立った福留にもAパスや好ディグがあり、そこから日本が得点につなげた場面があった。
一方でイランのサーブに崩され、理想的な攻撃を作れない場面もあった。
第3セットには、福留と石川の間で一瞬判断が重なり、石川が十分な助走に入れない場面も見られた。
レセプションは、ボールを上げればそれで終わりではない。
誰が取るのか。どこへ返すのか。そして、その後に何枚のアタッカーが攻撃へ参加できるのか。
数字上のレセプション効率だけでは捉えきれない部分に、日本がこれからさらに磨いていく余地は残されている。
17-20から逆転。苦しかった第3セット
日本がこの試合で最も苦しんだのが第3セットだった。
序盤から0-3、1-5と先行され、一度は逆転したものの再びイランに流れを渡す。
終盤には17-20。
ストレート勝利が見えていた日本だったが、簡単には終わらせてもらえなかった。
ここで途中出場した鴫原ひなたが、サーブで相手を崩す。
得点としては公式スタッツに残っていないが、セカンドボールを丁寧にセットする場面もあり、コートの中で役割を果たした。
日本は20-20まで追いつく。
それでもイランは粘り、23-24。
日本はセットポイントを握られた。
そして、ここで石川真佑がコートへ戻った。
最後の2点を決めたのは、石川真佑だった

23-24。
ラリーの中で日本がオーバーネットを要求してチャレンジ。
判定が覆り、24-24となった。
デュース。
そこからだった。
石川がレフトからクロスへ打ち込み、25-24。
そして最後も、石川。
レフトから放った一撃でブロックタッチを取り、26-24。
日本の勝利が決まった。
この試合の石川は11得点。
和田の19得点、島村の14得点より少ない。
スタッツだけを見れば、この試合で最も得点した選手ではない。
それでも、日本のアジア選手権2026を締めくくる最後の2点を決めたのは石川だった。
その事実には、不思議なほどこの大会を象徴するものがあった。
「自分達の目指してたところには達してない」
日本はイランに勝った。
銅メダルも獲得した。
それでも、試合後の石川から出てきた言葉は喜びだけではなかった。
「自分達の目指してたところには達してない」
そして、
「個人的には悔しさの残る大会だった」
と振り返った。
日本が目指していたのは、ここではなかった。
準決勝でタイに1-3で敗れ、今大会でロサンゼルス五輪への切符を手にすることはできなかった。
だから、3位決定戦に勝ったからといって、それまでの悔しさが消えるわけではない。
キャプテン2シーズン目。
石川がその立場で何を感じ、どれだけの責任を背負っていたのか。
そのすべてを外から知ることはできない。
ただ、大会を通してコートの中心に立ち続ける姿を見ていると、時に石川がひとりで大きなものを背負って戦っているようにも映った。
そして大会が終わった。
表彰式では、石川の目に涙があった。
その石川の肩を島村春世が抱き、山口真季が駆け寄った。
キャプテンとして前に立ち続けた石川を、最後は仲間たちが囲んでいた。
それもまた、この大会の最後に残った光景だった。

銅メダルを、次へ
目指していた場所には届かなかった。
コンビの精度、レセプションからの攻撃構築など、日本にはまだ向き合わなければならない課題がある。
それらについては、大会全体を振り返る中でも改めて考えていきたい。
ただ、少なくともこの3位決定戦で日本は勝った。
苦しんだ第3セットもひっくり返し、銅メダルを持ち帰った。
23-24からコートに戻り、最後の2点を決めたのは石川だった。
そして、その石川自身が「目指してたところには達してない」と語った。
だからこそ、この銅メダルだけで彼女の大会を評価することも、「悔しい大会だった」の一言だけで終わらせることもしたくない。
勝った試合もあった。
敗れた試合もあった。
新しい選手たちが力を見せた試合もあった。
そして、最後まで残った課題もあった。
そのすべてを抱えて、日本はまた次へ進んでいく。
まずは、キャプテンとして日本の先頭に立ち続けた石川真佑に、最大限の敬意を送りたい。
目指した場所には、まだ届いていない。
だから、この大会は終着点ではない。
次は、来年のW杯へ。


